設計士ブログ
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こんにちは。和歌山県日高郡みなべ町を拠点に、田辺市・御坊市・日高郡・西牟婁郡などで、新築注文住宅やリフォーム・リノベーションを手がける、エイト建築設計事務所です。
高気密・高断熱の快適な住まいと、家事がしやすい間取りをご提案しております。
以前の記事で、品確法の性能表示計算と許容応力度計算の違いについてお話ししました。今回はその続編として、建物の骨組みの中でもよく名前を聞く「筋交い(すじかい)」に焦点を当て、許容応力度計算ではどんなところを見ているのかを、できるだけやさしくご紹介します。
筋交いとは、柱と柱の間に斜めに入れる部材のことです。地震や台風のときに建物に横から力が加わると、本来四角い形をしている柱と梁の軸組(骨組み)が、平行四辺形のように変形しようとします。筋交いは、この変形を防ぐために入れる部材です。
筋交いを入れた壁は「耐力壁(たいりょくへき)」と呼ばれる壁の一種です。耐力壁には筋交いを使うタイプのほかに、構造用合板などの面材を柱に直接張る「面材耐力壁」というタイプもあります。どちらも横からの力に抵抗する壁ですが、仕組みが少し違います。
筋交いには、押される側(圧縮筋交い)と、引っ張られる側(引張筋交い)があり、それぞれ力への効き方が異なります。地震の力は一方向だけでなく左右どちらからも来るため、同じ壁の中の同じ筋交いでも、揺れの向きによって圧縮側になったり引張側になったりします。
筋交いの強さの目安になるのが「壁倍率」という数値です。建築基準法施行令第46条では、筋交いの断面(厚さ・幅)ごとに壁倍率が決められています。
また、1本だけでなくX形に交差させて入れる「たすき掛け」にすると、壁倍率は片側だけの場合の2倍の数値として扱われます。
許容応力度計算では、この壁倍率1.0あたり、壁の長さ1mにつき1.96kN(約200kgの力に相当)の短期許容せん断耐力として扱うのが基本的な考え方です。
なお、施行令第45条では、引張力を負担する筋交いは厚さ15mm×幅90mm以上の木材(または径9mm以上の鉄筋)、圧縮力を負担する筋交いは厚さ30mm×幅90mm以上の木材とする、という断面の下限も定められています。
壁量計算は、建物に必要な壁の「量」を足し算して確認するという方法です。これに対して許容応力度計算は、一枚一枚の耐力壁が実際にどれくらいの力を負担するかを求め、その力が柱・接合部・梁・基礎へどのように流れていくかまで、順番に確認していく方法です。筋交いについても、同じように一つずつ力の流れを確認します。
筋交いの入った壁が横から押されると、壁の端にある柱は持ち上げられるような力(引き抜き力)を受けます。許容応力度計算では、壁が負担する力からこの引抜力を求め、それに耐えられるだけの柱頭・柱脚の金物(ホールダウン金物など)を選びます。壁量計算のルートでは告示の表や「N値計算」という簡易な方法で金物を選びますが、この計算には筋交いの取り付く位置や向きによる補正が加わります。
筋交いの端は、告示で定められた方法で柱や梁に留め付けます。断面の大きさによって適切な留め方が決められており、金物の選び方を誤ると、計算上期待している筋交いの強さが実際には出ません。
押される側の圧縮筋交いは、端部で梁や土台を押し上げたり押し下げたりする力を生みます。その力をきちんと受け止められるよう、柱・梁・接合部の確認も欠かせません。
片側だけに斜めに入れる「片筋交い」は、揺れの向きによって圧縮側・引張側が入れ替わり、効き方が変わります。そのため、同じ通り(壁のライン)の中で、右上がり・左上がりの筋交いをバランスよく配置するのが基本とされています。
筋交いが建物の片側だけに集中していると、地震のときに建物がねじれるように揺れてしまいます。許容応力度計算では「偏心率」という数値を計算し、この偏りを確認します。
筋交いの入った壁の真下に、下の階の柱や壁がない場合、地震の力がそのまま梁に伝わり、梁がたわんだり傷んだりするおそれがあります。許容応力度計算では、そうした梁の強度やたわみを個別に検討します。なお、壁の端の真下に下の階の柱や壁があれば、この「梁上の耐力壁」には当たりません。
計算上どれだけしっかりした筋交いを計画しても、現場での施工が伴わなければ意味がありません。いくつか代表的な注意点をご紹介します。
まず、筋交いには欠き込み(部材を切り欠くこと)をしないというルールがあります。たすき掛けでどうしても交差部分の加工が必要な場合は、必要な補強を行います。配線や配管、間柱を取り付けるために筋交いを削るのはNGで、こうした場合は間柱の方を欠き込みます。
また、筋交いは窓やドアのある位置には入れられません。そのため、間取りや窓の配置を考える段階から、耐力壁の位置を一緒に検討していく必要があります。
断熱・気密の面では、筋交いの入った壁は壁の中に斜めの部材が通るため、充填断熱材を隙間なく入れる施工に手間がかかります。これに対して面材耐力壁は壁の中が空いているため、断熱材を入れやすく、気密の確保にも有利な面があります。どちらを採用するかは、強さ・コスト・断熱気密の施工性を合わせて判断することになります。
最後に、計算で想定した筋交いの位置・向き・断面・金物が、実際の現場でその通りに施工されているかの確認も重要です。配筋検査と同じように、上棟後の金物チェックなどで計算と現場を一致させていきます。
今回は筋交いに焦点を当てて、許容応力度計算がどんなところを見ているのかをご紹介しました。壁倍率という強さの目安から、柱の引き抜き、筋交いの向きのバランス、ねじれ、梁の上の耐力壁まで、一つひとつの力の流れを確認していくのが許容応力度計算の特徴です。
以前の記事でもお伝えしたとおり、許容応力度計算は無理な間取りを無理やり通すための道具ではありません。上下階の壁の位置をそろえるなど、構造としてシンプルで素直な計画を立てることが基本になります。
個別の建物の性能値や法令への適合については、最終的に担当の建築士と確認検査機関が確認するものです。この記事は、筋交いという部材がどんな役割を持ち、設計の中でどのように扱われているかを知っていただくための、一般向けのご紹介としてお読みいただければと思います。